こんにちは。覚王山の看護師の水野です。

私は訪問看護の仕事の傍ら、独学で英語や外国語の学習に日々奮闘しています。
いつかは看護師しながら通訳の仕事もできたらなあ〜と思っています。
というのも、昔から私の生まれ育った地域にはたくさんの外国の方が住んでいたからです。
みなさんの住んでいる地域には外国の方がどのくらいいらっしゃいますか?
全然いないよ~という方、ご近所さんが外国の人だよ~という方、さまざまいらっしゃると思います。
私の生まれ育った地域では主に自動車や電気製品の製造工場に出稼ぎに来ていた外国の方々や、その家族の方々(2世、3世)が多くいました。
彼らの国籍は、ブラジル、ペルー、中国、韓国、フィリピン、トルコなどさまざまでした。
小学校や中学校に通っているときはさまざまな国籍の同級生が、日本語だけでなく家族の会話でポルトガル語やスペイン語、トルコ語などを話している姿を見て”かっこいい~!”と感じていました。
しかし、友達の両親は日本語が十分に話せない方が多かったです。
実際、大人になって総合病院で働くようになってからは、そのような方々に出会う機会が多かったです。
医師の説明を聞くときは、日本語のわかる家族や友人を連れてきて説明を聞いたり、外国語の翻訳機器を使ったりしていました。
しかしコロナ禍で面会制限があったため、医師・看護師が言う簡単な日本語や”外国人患者対応マニュアル”(すごく古そうな資料でしたが…)を用いた説明を看護師からなんとな~く聞いて困った顔をしている方も多かったです。
日本人と同じように日本で働き、家族を持ち、生活しているのに日本人と同じ質の医療を受けているとは到底言い難い状況がそこにはありました。
そこで今回のコラムでは統計データや社会資源の情報、インタビューなどをもとに地域の在日外国人医療・看護の実態を紹介していきたいと思います。

在日外国人の動向

①在日外国人の推移

まずはじめに地域に住んでいる在日外国人の方々の動向を見てみましょう。
愛知県の外国人県民数は、2008年まで日系ブラジル人を中心に右肩上がりに増えていました。
その後、景気後退などにより減少したものの、2013 年からは再び増加に転じていました。
2020 年以降は、コロナウイルスによる影響で減少したものの、2020 年12月末現在では、愛知県は東京都に次いで全国 第2位で3万人以上となっており、県総人口に占める割合は、約 3.5%を超えています。

在日外国人の推移
愛知県内の市町村における外国人住民数の状況(2021年12月末現在)
社会活動推進課多文化共生推進室多文化共生推進グループ
https://www.pref.aichi.jp/soshiki/tabunka/gaikokuzinjuminsu-2021-12.html(2022.08.14現在)

在日外国人の国籍の内訳
愛知県内の市町村における外国人住民数の状況(2021年12月末現在)
社会活動推進課多文化共生推進室多文化共生推進グループ
https://www.pref.aichi.jp/soshiki/tabunka/gaikokuzinjuminsu-2021-12.html(2022.08.14現在)

国籍別にみると、ブラジル国籍の外国人県民が59,536人と最も多く、次いで2位以下では中国、ベトナム、フィリピン、ネパールなど、 アジアの諸国の外国人が多く居住しています。

 

②在留資格別在日外国人の割合

次に在留資格別の割合を見てみましょう。
居住者の在留資格別の割合では、永住者(永住許可を受けた者)と定住者(特別な事情を考慮し一定の在留期間の居住許可を受けた者)が半分以上を占める割合となっています。

愛知県の外国人県民の状況について
https://www.pref.aichi.jp/uploaded/life/333373_1324721_misc.pdf(2022.08.14現在)

このデータから、長期にわたり就労・ 居住する外国人県民が多い状況にあることがわかります。定住者や永住者は既に日本に長期的に住んで生活を営んでいるため、今後も長期または永久に日本で生活する可能性が極めて高いです。そのため、今後も日本で生活していく上で医療サービスや在宅医療の需要は増加していくことが予測できます。

 

愛知県の在日外国人に対するサービス

では実際に愛知県ではどのような在日外国人向けの医療サービスがあるのでしょう。
愛知県の公式ホームページを見ると愛知医療通訳システムというサービスが紹介されていました。
これは愛知県が医療通訳の派遣を病院などの組織または個人の依頼を受けて通訳員を派遣し、医療通訳のサービスを提供する制度のことです。
実際に通訳員を現地に派遣して通訳業務を行う派遣通訳と電話を通して通訳業務を行う電話通訳の2種類があります。
このサービスは内容や時間によって利用料金がかかります。

http://www.aichi-iryou-tsuyaku-system.com(愛知医療通訳システムのホームページURL)

やはりお金がかかるんだなと思いながらも調べを進めていくと、”MICA”(外国人医療センター)という団体を見つけました。
MICAはNPO法人で愛知県の在日外国人を対象に健診や健康相談を実施しているボランティア団体です。
HPやFacebookに活動が紹介されていました。

画像提供:MICA (Facebook)https://www.facebook.com/mica.japan

この写真はMICAのFacebookで使用されている画像です。
知れば知るほど活動に魅力を感じ、思い切ってHPからMICAの団体に連絡を取ると、思いがけないことに団体の担当者様が実際に会ってお話しを聞かせてくださることになりました!
以下にお話を伺った際の内容をご紹介させていただきます。


MICAのインタビュー
当日は担当者様にMICAについて教えていただきました。

MICAについて

MICAとは、”Medical Infomation Aichi ” の略称であり、MICA(外国人医療センター)はNPO法人であり運営は所属会員の会費や、他団体からの寄付によって運営しています。
在日外国人が日本人と同じように医療を受けられるようにという概念のもと1998年に設立され、当時はオーバーステイや在日外国人の方々の健康保険の未加入問題などが今よりも多かった時代であり、そういった外国人の人々の人権保護や健康問題を解決するために設立されました。
元々は事務所が名古屋市内だったため活動範囲は名古屋市内のみでしたが、愛知県はトヨタ自動車のグループ会社や更にその下請けの企業が県下に点在していたため活動を県下に拡大しました。

活動内容について

担当者様は、コーディネーターとして相談会開催に向けての広報、募集、共催団体との打合せなどを中心に活動を担当されています。
20年ほど前から県下で月1回の相談会開催を推進してきたがコロナ下で活動を自粛。3年前からは年3.4回程度の開催縮小しています。通常、相談会参加者はボランティアの参加意思で構成され、医師3・4名、歯科医師1・2名、看護師2・3名、その他4・5名で成り立っています。その時々によって参加者は増減しています。また、15年ほど前からブラジル人学校児童の検診を継続してきました。彼らの学校は塾と同じ扱いの為、行政の検診事業から漏れてしまいます。そのうえこの社会情勢の中で学校閉校という最悪の事態となり、ここにも外国人への差別の一端が垣間見える、との担当者様が話されました。

担当者様の想い

インタビューの中で、これらの活動を通してひとりひとりの生活の本質に向き合う姿勢を大切にしていると話されました。
というのも、ただ健康相談の際に問診票を書いてもらって説明をしたとしても、彼らの心には響かないという現実があるそうです。
それには、彼らの生活習慣(日曜日が休み・週末は家族で過ごすことが多い)や国民性(日本人のようにマメに連絡は取らない・独自のコミュニティがある・自分の国以外の人間を簡単に信用しない)、抱えている問題(健康のこと、お金のこと、保険のことなど多岐にわたる不安がある)といったことが影響しているとのことです。
そのため、健康相談の際に日本人と関わるときと同じような接し方をしても意味がないとおっしゃっていました。
後に紹介しますが、独自に問診票やガイドブックなどの改訂を行い、より外国の方々の特徴に合わせた対応の仕方を創意工夫して作成されています。
ボランティアスタッフや行政の職員に地域の在日外国人の生活環境や対応の方法などの講演会の開催などを実施し、外国人との関わり方を普及されています。
〈資料1:担当者様が作成した問診票(9ヵ国分程種類があります)〉


画像提供:MICA (Facebook)https://www.facebook.com/mica.japan

〈資料2:乳がん検診の際に参加者に渡すパンフレット 日本語・英語〉


 

 

 

 

 


画像提供:MICA (Facebook)https://www.facebook.com/mica.japan

〈資料3:知って得する日本の保険 日本語と英語(様々な保険情報をわかりやすくまとめたパンプレットです)〉

 

画像提供:MICA (Facebook)https://www.facebook.com/mica.japan

 

今後の課題

20年間にも及ぶ歴史の中で、地域の外国の方々のためにさまざまな活動を実施してきたMICAですが、現状、活動継続のための厳しい状況があるそうです。現状における課題として以下のことが挙げられます。

・活動のための支援(資金や人材)が集まらない
・日本人に対して在日外国人の置かれている現状の周知ができていない
・在日外国人の人たちが保険制度や社会資源を理解できていない
・在日外国人の人たちに健康診断の結果や生活指導の内容が伝わっていない

他にも様々な課題がありますが、特に運営のための財源や人材を集めることが非常に苦しいとのお話されました。
というのも支援を行政や企業に支援を依頼しても、
”外国人の人でも健康保険入っている人が多いんだから病院に行って貰えばいいじゃない。”
”周りに日本語できる人が2世、3世ならいるでしょ。だから支援しなくてもいいんじゃないの?”
というような話になってしまうそう。
しかし、実際に活動している中で明らかになっていることとして、外国の方々も健康保険などの制度に加入していますが、仕組みを理解できず制度を利用できていないこと、いざ使うとなると行政機関や医療機関の難しい日本語を理解しなくてはいけないため困難を要するといった問題が起きているそう。
日本で日本人と同じように生活をしているけれど、日本人でも難しい行政の手続きを彼らが実施していくのは困難であることをもっと知って欲しい・・・日本人だって理解するのが難しいのに。
そう担当者様は熱く語られました。

また、人材に関してもボランティアスタッフは主に医療機関で医療従事者として仕事している人が多いことから、コロナ禍の現在ではボランティア活動に参加しにくい現状があるとのこと。
今回のインタビューを通して少しでもMICAの活動や地域の外国人の方々の現状に興味を持ってくれる人がいれば嬉しいとお話されていました。

次回、健康相談は11月13日(日)に13時~名古屋国際センターで実施されます。
受付や問診の対応を担ってくれるボランティアを募集しています。
MICAのFacebookやHPに詳細が載っていますので、寄付やボランティアに興味があればぜひ覗いてみてください!

https://npomica.jimdofree.com(MICAのHP URL)
https://www.facebook.com/mica.japan(MICAのFacebook URL)

まとめ

長々と文章を書いてしまいましたが、愛知県に住む外国の方々のことやそれに関わる支援について紹介させていただきました。
今回紹介した制度や団体以外にも地域の外国の方々の医療や健康のサービスは少なからずあると思います。
私の今後の野望としては、地域で暮らす外国の人々の生活の実態や医療サービスについて、時には体験談も交えてどんどん発信していきたいと思っています!
国籍関係なく、人々が安心して訪問看護やサービスを使っていただける環境づくりに貢献していきます。
皆さんの地域の周りの外国の方で困りごとがある方などがいらっしゃったら、Footageに相談してください。
私たちFootageではこのような地域の外国の方々の相談にも乗っています。何かあればお気軽に相談してください。

 

Footage訪問看護ステーション 覚王山
水野