こんにちは。Footage訪問看護ステーション覚王山の水野です。
前回のコラムでも書きましたが、私は仕事の傍ら、独学で英語や外国語の学習に日々奮闘しています。
医療通訳や海外の看護師や医療職の事情などに興味が深々で暇さえあれば海外サイトを見て海外の看護師の免許や働き方、年収などを調べています。

今回のコラムのテーマは”世界の看護師の年収”についてです。

看護師の年収について

看護師の年収って高いの?

看護師として働いていると、
”看護師ってある程度給料いいからいいよね〜”
このような言葉をよく言われます。
しかし、実際、看護師として働いていると”本当か?”と思うことがよくあります。
最近のデータによると、日本の看護師の平均年収は上がっている傾向があります。しかし、地域や雇用形態によって大きく異なるため、一概には言えません。
公立病院や大手民間病院などの就業形態では、平均年収が高くなる傾向がありますが、介護施設やクリニックなどの就業形態では、平均年収が低くなる傾向があります。また、地域によっても差があり、都市部の看護師の平均年収は、地方や離島の看護師の平均年収よりも高い傾向があります。
看護師と言っても勤務する場所は様々なので、比較が難しいですが、今回は日本で働く看護師の平均的な年収は世界の看護師と比較するとどんな程度なのか今回は年収の側面だけで分析していこうと思います。

日本の看護師の年収は上がっている?

COVID-19パンデミックにより、看護師の賃金水準とその職業への引き留めに必要な十分な報酬がますます注目を浴びるようになりました。日本でも、岸田総理大臣は福祉職員全体における待遇改善に注力しており、2022年2月から看護師の賃金引き上げが実施されました。厚生労働省の発表によれば、2021年の日本の看護師の平均年収は492万円であり、2019年の時点での平均年収の約483万円と比較すると、この2〜3年で年収が上昇していることがわかります。

(図1:看護師の平均賃金 月収換算 厚生労働省)

 しかし、看護師の年収の内訳は、主に基本給・夜勤手当・残業代(時間外手当)・ボーナス の4項目が主な内訳であり、特に夜勤手当や残業代が年収を引き上げていると言われています。基本給のみに焦点を当てると看護師の平均基本給208,918円であるため、手当がなければあまり高くないです。また、一般企業とは違い、職業柄どうしても在宅ワークなどの遠隔業務ができないため、妊娠や出産などのライフイベントがあると夜勤手当などがでない分、給与が大幅に下がってしまいます。そのため、夜勤や残業ができないとなると大幅な賃金の低下が見込まれます。

 

世界の看護師年収の実情について

世界の看護師の年収は上がっている?

では世界の国々の看護師の年収はどのような感じでしょうか。
みなさんも最近はテレビやYouTubeなどで”出稼ぎに行く日本の若者たち”というような特集などが先日放送されていました。
国を超えて就労に就くことで、自国の経済状況が悪く求職が難しい場合には、海外での仕事を探すことで収入を得ることができます。また、海外での仕事によって、自国よりも高い収入を得ることができる場合があります。
これも看護師の職業でも同じなのか検証していきましょう!

OECD(経済協力開発機構)諸国の看護師賃金の平均値

看護師の報酬に関する比較分析によると、OECD(経済協力開発機構)加盟国の中で、2019年(パンデミック前)の病院看護師の報酬は、全労働者の平均賃金をわずかに上回る傾向が見られます(平均の1.2倍)。ただし、スイス、リトアニア、フランス、ラトビア、フィンランドなどの一部の国では、看護師の収入は全労働者の平均賃金よりも低い傾向があります。一方、チリ、メキシコ、ルクセンブルグ、ベルギーなどの国では、看護師の収入ははるかに高くなっています(図2)。日本は平均値を下回る国の一つであることがわかっています。

(図2 : Remuneration of hospital nurses, ratio to average wage, 2019 (or nearest year)
OECD Health Statistics 2021.)

看護師の相対的な経済的幸福

図  は、病院の看護師の報酬を共通通貨 (米ドル) に基づいて比較し、購買力の違いを調整して、各国の看護師の相対的な経済的幸福と、より良い賃金を求めて他のOECD 加盟国への移動を検討する経済的インセンティブを示しています。
※購買力とは、ある通貨でどれだけの量の物やサービスが購入できるかを表す指標のことを指します。具体的には、ある国の通貨で1000円分の商品を購入する場合、別の国の通貨で1000円分の商品を購入する場合と比較して、同じ金額で購入できる物やサービスの量が異なる場合に、それぞれの国の購買力が異なると言えます。(例:例えば、日本円で1000円分の商品を購入できる場合と、アメリカドルで10ドル分の商品を購入できる場合では、アメリカドルの方が高い購買力を持っています。これは、アメリカドルで10ドル分の商品を購入することができるため、より多くの物やサービスを購入することができるからです。)
購買力は、経済指標の1つとして扱われ、国の経済力を分析する際に重要な役割を果たします。また、国際間の比較をする際には、為替レートの変動が影響するため、購買力平価(PPP)と呼ばれる指標が使われます。PPPとは、物価水準を基準として、各国の通貨同士の交換レートを決定する方法で、為替レートとは異なり、実際に買える量に着目したレートとなります。
購買力の概念は、消費者にとっても重要であり、個人の所得や地域の物価水準によって、購買力が異なることから、必要な物やサービスを購入するためには、地域の物価水準を考慮した購買力の確保が求められます。残念ながらここでも、日本は平均値を下回っていました。

 

(図3: Remuneration of hospital nurses, USD PPP, 2019 (or nearest year)
OECD Health Statistics 2021.)

世界の看護師の報酬の傾向

世界の看護師の報酬について、2019年のルクセンブルグの看護師の報酬水準は非常に高く、リトアニア、スロバキア共和国、ラトビアで働く看護師の4倍以上であったことが報告されています。また、病院で働く看護師の報酬の傾向は、2010年以降、多くの国で実質的に増加していることが報告されています。ただし、フランスとアメリカでは2018/2019年の看護師の報酬は2010年とほぼ同じであり、その後2013年以降回復し、2019年の平均報酬水準は2010年よりも実質で約5%高くなっています。イスラエルやオーストラリアでは2010年から2018年の間に看護師の大幅な昇給があったことが報告されています。

(図4:Trends in the remuneration of hospital nurses (real terms), selected OECD countries, 2010-19
OECD Health Statistics 2021.)

イギリスでは、看護師の報酬は名目ベースで増加しましたが、主に 2010・11 年から 2017・18 年の公共部門の賃金上限により、2010 年から 2018 年の間に実質ベースで 5% 以上低下しました。 2018 年以降、実質ベースでの看護師の平均収入は、2018 年から 2021 年までの変更のためのアジェンダ (Agenda for Change) の賃金協定により増加し始めました 。このような背景もあって現在イギリスでは看護師やそのほか医療職者のストライキなどが増えているように思います。

(図5:厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」のデータをもとに作成)

日本のデータは見つけられませんでしたが、厚生労働省が統計で出している平均年収の推移では、2019年まで緩やかに上昇していましたが、2019年以降は急激に上がっています。2019年以降はコロナウイルスの蔓延によって医療機関や医療職者に対して補助金などが支払われたのが一因ではないかと考えています。

コロナ禍で生まれたボーナス

多くの国では、看護師がパンデミック中に果たした最前線の役割と、それに伴うストレスと作業負荷を認識して、何らかの形で COVID-19 の「ボーナス」を看護師に提供しました。日本では、コロナウイルスに感染した患者の対応をする場合は、危険手当のような形で報酬が払われていました。このようなボーナス支払いのレベルと適用範囲は、国によって異なります。
ドイツでは、2020 年に老人ホームで働く看護師と、COVID-19 患者の数が最小限の病院で働く看護師 (資格のあるすべての病院の約 3 分の 1) にいくつかのボーナスが提供されました。 2021年4月には、病院の看護師に追加のボーナスが提供されました。国のボーナスは、勤務時間に応じて 500(約70,820円) ユーロから 1,500 (約212,461円)ユーロの間でした。一部の州は、約 500 ユーロの追加ボーナスも提供しました。このように日本以外の国々もコロナ禍で同様に一部の賃金の上乗せや給料のベースアップが図られたことがわかります。
しかし、結局は感染症の流行に関する医療機関・医療職者へのボーナスや手当として一時的に支払われている報酬のためコロナウイルスの終息とともに来年以降は平均賃金は低迷するのではないかと予測する専門家などもいます。実際、日本では2023年5月7日かかコロナウイルス感染症を2類感染症から5類感染症に変更しており、これによって感染者を診療する医療機関への補助といった医療的な措置が変わりました。ただし、これらのデータは、カナダ、チリ、アイルランド、および米国のRegisted nurse(登録済み 看護師=一定の資格を持った専門職看護師)のみを参照しており、低レベル (「准専門職」) 看護師も含まれる他の国と比較して過大評価されています。ニュージーランドのデータには、公的資金による地域の保健委員会に雇用されているすべての看護師がすべてのレベルで含まれています。また、登録看護師とは異なり、給与構造が大幅に低い保健助手も含まれます。
日本には厚生労働省が発行する看護師免許を持つ正看護師と都道府県知事が発行する准看護師免許を持つ准看護師があるように、国によって看護師の免許のレベルが違うため厳密には数値の乖離があることになっています。

世界の看護師の年収比較

難しい話ばかりしたので最後はパッと見てわかる各国の看護師の平均年収を表にしてみました。
3月はWBCを見て感動したのでWBCの出場国の予選プールA〜Dの国々を各プールごとに分けて看護師の平均年収をグラフにしてみました。
WBCならぬWNC(World Nurse Classic:世界の看護師の年収決定戦)を開催します〜!


プールAではオランダやイタリアのヨーロッパの国々の看護師が平均年収が高い傾向にありますね。
また、ヨーロッパに次いで台湾が平均年収500万円超えをしています。

プールBではオーストラリアがトップで600万円超えをしています。
中国の看護師の平均年収が日本よりも高いですね。経済成長の影響などがあるのでしょうか。

プールCではアメリカがどこの国も差し置いてぶっちぎりの1位ですね!
看護師で1000万円を超えるのはまさにアメリカンドリームですね。
ただ前述したようにアメリカでは看護師の職位が細かく分かれていたり、州によってかなり年収が違うのも一つの理由かもしれません。
カナダはギリギリ1000万円超えないですが、どちらの国も高いですね。
コロンビアやメキシコなどの南米は物価なども低い分、年収は低い傾向にあります。


最後にプールDです。
プールDは非常に面白い結果になっています。
まず、”え!ベネズエラって南米の国なのにとっても年収高いじゃん!”って思いますよね。
ただネズエラは現在ハイパーインフレ(物価が非常に急速に上昇する現象)が起こっているので見かけ上の支給額が高いだけです。
日本でもニュースになりましたが、ベネズエラでは2016年以降、1年間で数百万%のインフレーション率の上昇が起こりました。トイレットペーパー1ロールを買うのに15,000ボリバル(日本円換算で81,481円)必要な時期があったのも有名な話です。経済の動向がそのまま年収に響くので恐ろしいですね。
次いでイスラエルの看護師の平均年収が800万円ですが、こちらは特にハイパーインフレなど現象は起きていません。
あまり知られていませんが、実はイスラエルは世界最先端の医療技術を誇る国のうちの1つです。国民の健康データをITと紐付けて連動させるデジタルヘルスケアの先進国であり、医療水準がダントツに高い国なんです。それによってイスラエルの医療職者の教育レベルも非常に高く評価されており、看護師の職位が高いことや専門性が強いことから平均年収が高い理由になっています。

最後に

長々と書いてしまいましたが、日本と世界の看護師の収入事情について少しでも興味を持っていただければ幸いです。
私は海外の医療事情や看護師の制度のことになると熱がこもってしまいます。
ちなみに最近はTOEICの勉強をしながらNCLEX(アメリカの登録看護師の試験)の勉強も頑張っています。
職場ももっとグローバル化していったらいいな〜!って思ってます!
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